おかいこ「ヤママユ」の話 – サブカルビジネスセンター

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2021.08.7おかいこ「ヤママユ」の話

今回は「ヤママユ」の話です。

ヤママユとは――
日本在来の代表的な野蚕で、北海道から九州にかけて分布し、全国の落葉性雑木林に生息している。
ちなみに野蚕(やさん)とは、
家畜化された蚕(家蚕)の対義語で、絹糸を生成する野生の昆虫のうち人間が利用してきたものの総称。
(Wikipediaより引用)


ヤママユとはカイコの仲間のことです。
孵化してから4回脱皮をし、繭を作りサナギとなり、成虫になります。
大型で、成虫はハネを広げると10センチを超えます。
ハネの色は黄褐色、灰褐色、赤褐色など、色彩には変異があり、
4枚の翅には、それぞれ1つずつの目立つ紋と、黒色の細帯があります。
そしてヤママユの成虫は口が退化しており一切の食事をせず、
幼虫の時に蓄えた栄養だけで生きていきます。

この成虫後は口がないというのはヤママユだけでなく、日本などでも養蚕されていた
カイコも同様です。
カイコと言えば、繭を作る過程で収穫できる絹糸ですね。
ヤママユも同様に、繭から絹糸を採ることができます。
カイコの繭は白ですが、ヤママユの繭は緑色をしており、こちらもとてもキレイです。
前述では野蚕と書いていますが、現代ではヤママユは養蚕されてもいます。
そしてヤママユの糸は天蚕糸(てんさんし)と呼ばれ、非常に高価な糸として利用されています。

カイコは桑を食べて育ちますが、ヤママユはクヌギやコナラなど、ブナ科の葉っぱを食べて育ちます。
そして室内で飼育できるカイコとは違い、野外で他の虫や鳥から、樹に網などを掛けて守らなければならず、
非常に手間がかかります。
そうして収穫した繭は、通常のカイコの繭の4倍ほどの大きさになります。
それじゃあ採れる糸の量も多かろうと思いきや、残念ながら実際に採れる生糸はカイコより少ないのです。
ちなみにカイコは品種改良によって、採れる糸の量がとても多くなっているのも理由の一つです。
ヤママユは通常のカイコに比べ大型のため、繭を作るために吐く糸も太く、繊度が倍近くあります。
伸度も大きく、こちらも通常の絹の倍ほどもあります。これは生地にしたときにシワになりにくいことを意味しており、
そして断面の形状が扁平なため、通常の糸より豊かな光沢をもっています。

このように美しい糸が採れるヤママユですが、
現代ではビニールハウスに木を植えて、そこで飼育されているそうです。
そうはいってもやはり飼育は大変で、生き物ですから病気にもなりますし、
木が大きく育ってしまうと繭を採るのが大変なので人の背丈より小さくなるように剪定したり、
太くなった枝を払って若芽を育てる必要などがあります。
また、地面は土ですから土壌の管理も必要です。
また、網をかけて鳥やほかの虫から守れても、蟻だけはどうしようもないそうです。
地面から上がってくる小さな蟻からはどうやっても守れないし逃げられないので、飼育場内の蟻の巣は全て駆除しているそうです。

こうして飼育されているヤママユ、
昔は日本各地で飼育されていたそうですが、現在では長野県で飼育されているものが主になっているだけだそうです。
数軒の養蚕農家によって2万~3万粒が生産されていますそうで、反物に換算すると10反分ほどにしかなりません。
天蚕糸自体も色付けのしにくさや高価すぎるもののため、使い勝手もあまり良くないそうです。
和服一着をこれで製作しようとおもったら、材料費だけで数十万するようになるため、
現在では和服の一部分や刺繍などでアクセントに使用したりすることが多いそうです。

現在では伝統文化として長野で続いています。
このような文化は手芸をする自分も興味深いものなので、続いていってほしいものだと思います。

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